あの日ぼくらが信じた物
「なに。なにがそんなに楽しいのよ、ニタニタしちゃって!」


 顔がにやけて来るのが止まらなかったぼくは『恥をかかせたお詫びに』と買って来て貰ったケーキを頬張りながら「だって旨いよ? このケーキ」とか言って誤魔化していた。



翌朝───────



「あ、あの。おはよう」


 教室に入ると、鈴木さんが声を掛けてきた。


「あ、おは……よう」


 大人しい印象のある彼女から話し掛けてくるなんて、考えてもみなかったぼくは、どぎまぎしながら返事をした。


「まだ怒ってる? 昨日のこと……」


 上目遣いにぼくのことを見上げてくる。


「いや、全然怒ってないよ。元々ぼくはそういうポジションだし」


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