あの日ぼくらが信じた物
 みっちゃんに見とれていたぼくは、すっかり本来の目的を見失っていた。彼女の輝きはそれ程迄にぼくを魅了していたんだ。


「すいません。バナナボート2つとアイスミルクと……ぼくはブ、ブラックで」


 ぼくはみっちゃんに男らしい所を見せようと、飲んだことも無いブラックコーヒーを注文していた。


「ホットですか? アイスですか?」

「ホ、ホットで」


 男ならホットで渋く決めるべきだと思ったぼくはそう注文すると、素知らぬ顔でみっちゃんの所へ戻った。


「ね、あきらくん」


「なあに?」


「私達、恋人同士に見えるかしら」


「ううん。無理じゃないかなぁ」


 ぼくはみっちゃんに意地悪で返した。彼女に見とれて注文するのを忘れてたなんて、少しシャクだったから。


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