あの日ぼくらが信じた物
「嘘だよみっちゃん! でもこうした方がより恋人らしいかも」


 ぼくの言ったことを真に受けたみっちゃんが眉を下げ、うるうるとこっちを見る。思わず意地悪している余裕が無くなってしまったぼくは、みっちゃんの隣に椅子を並べて座ったんだ。


「あきらくんの意地悪!」


 そう言ってつねられたぼくの太ももは、みっちゃんの優しい手加減の所為で、何故か気持ち良くなってしまう。



  ピッキィィィンッ



 それからバナナボートが来るまで、ぼくは不自然に腰を引いた態勢を取らざるを得ない状況に陥っていた。


「お待ちどおさまでした」


 そして運ばれて来た品物を見て開口一番みっちゃんは言う。


「あきらくんまた無理しちゃって、ブラックなんか普段飲まない癖に!」


 お店のお姉さんは笑いを噛み殺しているように見えた。


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