あの日ぼくらが信じた物
「川田さん、みっちゃんはね……」


 するとぼくの言葉を遮ってみっちゃんが割り込んでくる。


「もうっ! 久美ちゃんたら、私をおだててどうしようっていうのっ?」


 ぼくに軽く目配せして、みっちゃんは川田さんに絡んでいる。そうか、彼女は旧友を悲しませたくないんだ。

 ぼくはその気持ちを汲んで、そのまま何事も無かったように川田さんと接する。

そしてその日はあまり時間もなかったので、ぼくらは貰う物だけ貰って失礼することにした。


「こんなに沢山ごめんなさい。じゃあ帰るネ」

「折角飛行機で来たのにもう帰るの?」と言って驚いている川田さんを「また明日来るから」と言って更に驚かせ、ぼくらはいつもの神社に舞い戻った。


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