あの日ぼくらが信じた物
 川田さんに揃えて貰った防寒着は、家のペンキ倉庫にビニールをしっかり被せてしまい込んだ。

そのまま置いていたら間違いなくペンキの臭いが染み付いてしまうだろうし、揃えて貰ったとは言っても、これは頂いた訳では無いのだろうから。


「あきら」

「なんだい? 母ちゃん」


 家に帰ると母が何か言いたげな顔をして寄ってきた。


「喧嘩なんかしてないかい? みっちゃんを悲しませたらいけないよ?」

「当たり前じゃないか! バッチリ完璧に仲良くやってるって」


 実際とは少し違うけど、ぼくもみっちゃんもこれからの時間を楽しく過ごすと決めたんだ。


「それならいいけど……暗い気持ちやストレスは病気の進行を早めてしまうって小耳に挟んだから」


 そうだ。ぼくらに残された時間は限られているんだ!


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