あの日ぼくらが信じた物
「あきらくん。恥ずかしいんだけど私、濡れちゃったみたい」


 【濡れちゃったみたい】


  【濡れちゃったみたい】


   【濡れちゃったみたい】


 それを聞いたぼくは軽く目眩を起こす程、身体の一部分に血液が集まっていくのを感じていた。


「み、みっちゃん!」

「だめっ! ご近所よ!」


 荷物を放り出して抱き付こうとしたぼくを、慌ててみっちゃんが制する。


「ごめん」

「ううん、ほんとは私も抱き締めて欲しいの」


 恥じらって俯くみっちゃんは、お風呂上がりみたいなピンク色になっている。普段からスベスベの肌もより艶やかに煌めいて、匂い立つ香りは妖しい魅力に満ちていた。


「と、取り敢えず神社に行こう」


 ぼくは、そんなみっちゃんを見続けていたい気持ちをなんとかねじ伏せてそう言ったんだ。


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