あの日ぼくらが信じた物
 みっちゃんは痛い程にしがみ付いてからガックリと力を抜いた。


「私、イッちゃったみたい」

「初めてなのに? ぼくたちって凄くない?」

「うん。あきらくん、とっても良かった。でもあっち向いてて」


 みっちゃんはぼくの後ろで後始末をしているみたいだ。ぼくは『親しき仲にも礼儀有り』だと思って、覗き見ることはしなかった。


「もういいわよ? 先にシャワー浴びるね?」


 いつの間にかシャワールームから呼び掛けられた。ぼくはまた一瞬で妄想に満たされる。


「みっちゃんが見たい!」


 そう思ったぼくは、すりガラスの向こうでボンヤリと形をなしている影に言った。


「みっちゃん! ぼくたちは夫婦なんだから、お風呂も一緒に入らなきゃじゃないか?」


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