あの日ぼくらが信じた物
「仕方ないさ。こういう、ブルフェイスと言って口角の垂れ下がった犬は、口がしっかり閉まらないからみんなこうなんだ」


「でもパパ、何でダンディーには尻尾が無いの?」


 ダンディーのチョコンと申し訳程度にしか付いていない尻尾を触りながらみっちゃんは言う。


「色々謂われは有るけど、闘犬として飼われていた頃の名残だとか言ってたな。尻尾を咬まれないようにだとか」


 器用に板を組み上げ、釘を打ちながらみっちゃんの相手をするみっちゃんパパ、そうか。だから尻尾が無いのか。


「鈴木さん。もうここは塗ってもいいんですか?」


 父ちゃんの担当は勿論ペンキ塗りだ。臭いに敏感な犬だから、水性の特殊なペンキを用意してスタンバっている。


「ああ、屋根を付ける前の方が確かにいいですね。お願い出来ますか?」


 やっと父ちゃんの出番だ。父ちゃんは仕事の丁寧さで売っている根っからの職人だから、みっちゃん達にも喜んで貰えるだろう。


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