あの日ぼくらが信じた物
 壊れたヌイグルミを見つけた時は少し焦ったけど、毛色が違うのにすぐ気が付いて胸を撫で下ろした。

 恐らくマーガリンは遠くまで運ばれて、野犬の餌になってしまったに違いなかった。



───────



「どこにもマーガリンらしき死骸は無かった。きっとどこかに逃げたんだよ」


「うん……。そうだよね。あきらくんがそう言ってくれるなら、そうだと思う。あきらくんが言うんだもん。そうよ」


 みっちゃんは自分に言い聞かせるように繰り返して、腕を組みながら大袈裟に頷いた。


「勿論だよ。歯もしっかり生え揃ってたんだし、逞しくやってるさ」


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