あの日ぼくらが信じた物
 突然号泣し始めたみっちゃんは、鼻水を垂らしながら泣き叫んでいる。


「わだしが紐でつだいだかだ? わだしのせいでバーガリンが……あああああん! ヒクッ、ヒック」


 ぼくは自らの失言を心の底から悔やんだ。護っていたわって慈しんであげなきゃいけないみっちゃんを、不安と後悔と悲しみの海へ突き落としてしまったのだから。


「み、みっちゃん! 死んだって決め付けるのは早いよ。血だってこれしか出てないし、死骸だって無いじゃないか!

 ぼく、周りを探して来るからみっちゃんは待ってて」


 でもぼくは思っていた。血が出たのは少しだけでも、首輪から抜けてしまう程に引っ張られたら無事では済まないだろうと。


「大丈夫。うまく逃げたよ、きっと」


 結局どこを探してもマーガリンの亡骸は見付からなかった。


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