心外だな-だって世界はこんなにも-
この病院には、お見舞いでよく来ていた。
だから、受付で看守の目を盗んで、出入りできることも知っている。
ふらっと入ればいい。万が一、看守に遭ったとしても、笑顔でお辞儀をしておけばいい。いい意味で、自由。悪い意味でセキュリティーの緩い、そんな病院だった。
ここで、聡くんは入院していた。
大腸の重い病気だとかで、闘病していた。
まるで、6年前のことなのに、まだ昨日のことのように思えて、今も、この病棟内を歩いていれば、聡くんに会えるんじゃないかという気持ち。不思議な気持ちになってしまう。
それほど、6年経っても、この場所は変わり映えのしないということなのだろうか、まだ私が聡くんのことを引きずっているのだろうか。そのどっちもかもしれないし、そのどっちも違う別の理由があるのかもしれない。