彼の瞳に独占されています
「夏用のスーツを新調したいんです。見に来る時間がなくて、もう暑くなってきてしまいましたけど、やはりスーツはオーダーが良くて」


さすがオーダーを好んでいるだけあって、今のスーツも彼にぴったりだ。それにも、魅力的な微笑みにも、うっとりしてしまう。

でも……左手薬指に光り輝くものがあるんだよなー……残念!

若干テンションが下がりつつ、そんなことは微塵も感じさせない笑顔を向ける私。


「ありがとうございます。通気性があって軽い素材の生地をご用意いたしますね。今からだと完成は七月になってしまうのですが、よろしいでしょうか?」


元々用意されている基本的な体型の中から、自分の身体に近いものを選んでいくパターンオーダーという方法は比較的仕上がりが早いけれど、それでも最低三週間は掛かってしまう。

その旨を伝えると、彼はふっと微笑み、「えぇ」と頷く。


「大事な戦闘服ですから、時間を掛けて仕上げていただくのは当然です」


あぁ、理解もあって本当に素敵な人……! もっと早くできないのかと無理を言う人も、たまにいるから。

対応もイケメンだわ、と惚けてしまいそうになる自分を慌てて引き戻し、さっそく話を進めていった。

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