彼の瞳に独占されています
翌日、中遅(なかおそ)という遅番より少し早く上がれるシフトになっていた私は、午後七時まで働いた後、地下一階の食品売場で買い物をしていた。
この時間は値下がりしている商品が多くなるから、それ目当てで。
様々な店舗が並ぶお惣菜のコーナーを回っていると、美味しそうなまん丸のライスコロッケが目に入る。しかも半額!
「今日はこれとビールで決定ね~」
独り言を漏らし、ウキウキな気分で店員さんにそれを頼もうとした時だった。
「きゃっ!?」
女性の小さな悲鳴が聞こえた気がして、ぱっと出入口がある方を見やる。ピーク時よりは少ないけれど、それでもまだお客さんはいるから、その人達に遮られて何が起こったのかは見えない。
気のせい?と首をかしげ、とりあえずライスコロッケを頼んだ。
しかし、そのすぐ後、お客さんがざわめき始める。再びそちらを見ると、誰かを避けるように皆が通路の端に固まっていた。
人の間を、覚束ない足でヨロヨロと歩いてくるのは、赤い顔をした年配の男性。明らかに酔っ払いだ。
「おっ、かーわいいねぇ~」
近くにいた若い女の子達が、ちょっかいを出されそうになって逃げ惑っている。さっきの悲鳴の正体もこれか……!