彼の瞳に独占されています

以前、淳一が私を守ってくれたのも、高校時代のこと。

文化祭の準備で遅くなった帰り道をひとりで歩いていると、コンビニにたむろしていたガラの悪い男子ふたりに絡まれてしまった。

『遊ぼう』と誘われて拒否したら、無理やり連れていかれそうになって。絶体絶命!と青くなっていた時、救世主が現れたのだ。


淳一は偶然コンビニの中にいたらしく、スッと私達の間に入ってきた。私から引きはがされた男子は、黙って引き下がるわけもなく、彼に殴り掛かってくる。

相手はふたり、しかも淳一より大柄な体型。私は一瞬で彼がボコボコにされる図を想像し、『やめて!』と叫んでいた。


……しかし。淳一は軽やかに身をかわし、長い足を高く上げ、空手の技のように鮮やかな蹴りを繰り出したのだ。

こちらが不利だったにもかかわらず、あっという間にふたりを平伏させた彼は、恐ろしく冷たい無表情でこう言い放った。


『こいつに手出す奴は誰だろうが許さねぇ』


……あんなに怒っている淳一を見たのはこの時が初めて。

その迫力がちょっぴり怖くもあったけど、私を守ってくれたことは本当に嬉しかったし、それに……。

< 56 / 124 >

この作品をシェア

pagetop