彼の瞳に独占されています
ありがとうとお礼を言った私に、

『自分の大事なモン守るのは当然だろ』

と、さらっと言ってのけたあいつは、めちゃくちゃ頼もしくて、カッコいいと思ってしまった。

今日もお礼を言ったら、またこの言葉を聞けるのかな……?


遅めの夕飯とともにテーブルに置かれたスマホに指を滑らせ、物思いにふけっていた私は、淳一の電話番号がスクロールされた瞬間はっとする。


「って、何を期待してるんだ私は」


ひとりツッコミをいれ、スマホの画面を黒くしてため息をついた後、ライスコロッケを頬張った。

普通に淳一に電話すればいいのだけど……なんだか余計なことを考えてしまって掛けづらい。ただ“ありがとう”と言えばいいだけなのに、自分に変な下心があるような気がして。

彼は依頼人の安全を守るという当然の責任があるから助けてくれたまでのこと。きっと、もうあんなセリフを言ってはくれないというのに。


ビールを喉に流し込むと、浮名さんと別れた時と同じく、苦いだけで美味しさを感じられなかった。

私は、淳一の大事なものであり続けたいと、心のどこかで願っているのだろうか──。




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