彼の瞳に独占されています
うそぉ……本気? 私、絶叫マシーンとかあんまり得意じゃないんだけど大丈夫?


「昔よくチャリで二人乗りしただろ」

「それとこれとは全然違うから!」


ツッコミを入れる、まったく乗り気じゃない私。淳一は軽くため息をつき、私の手からヘルメットを取り上げる。


「つべこべ言わず行くぞ」

「ぎゃ!」


がぽっ、と無理やりヘルメットを被せられ、仏頂面をする私を見て、ヤツは吹き出した。「宇宙人みてぇ」と言いながら爆笑するこの男……シバいていいですか?

仕方なくパーカーを羽織り、ぎこちない動きで淳一の後ろに跨がると、彼は私を振り返って不敵に口角を上げる。


「しっかり掴まってろよ」

「う、うん」


遠慮がちに、彼の腰に手を回す。細身だけれど逞しい……この身体に、自分から抱きつくことになるなんて。

緊張しているのは、きっとバイク初体験ということだけじゃない。

淳一は私の体勢が整ったのを確認すると、ハンドルを握り、アクセルをふかす。彼の服を握る手にぎゅっと力を込めた。


「しゅっぱーつ」


彼が意気揚々と声を上げると同時に走り出したバイクは、ぐんぐんスピードを上げていく。

「きゃあぁ~~!!」と叫ぶ私を乗せ、どこかの地を目指して風を切っていった。




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