彼の瞳に独占されています
朝のちょっとした時間では詳しい話ができなかったため、いつものようにランチをしながら話すことにした。

私が経済力を気にするようになったのには家庭環境が関係していて、淳一への想いから逃げるために、本気ではない恋愛をしていたこと。そして、彼とほんの少しだけ付き合っていたことも明かした。

弥生ちゃんはとっても驚いた様子で、パスタを絡めていたフォークを置いて言う。


「まさか、先輩達が一度付き合ってたなんて……! ごめんなさい、そうとは知らずに勝手なこと言って……」

「いーのいーの! 言わなかった私がいけないんだし、弥生ちゃんが言ったことはもっともだし」


肩をすくめて謝る彼女に、私は手と首を振って制した。

淳一への恋心を消そうとしていたから、付き合っていた記憶もなくそうとしていたのだ。その時のことはお互い口に出さないから、本当になかったことにできそうな気がしていたけれど。

お味噌汁を一口飲むと、私も手を止め、嘲笑を漏らしながら話し出す。


「私、結局臆病者でさ。今の関係を崩すのが怖いんだよね。十年も友達やってると、もう踏み出し方もわかんなくて」


今さらどうやって新しい関係を築けばいいのかわからないから、一歩を踏み出せないというのもある。

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