彼の瞳に独占されています
意味深な笑みを浮かべる彼女だけど、私にはもうそんな期待はできない。

でも、自分だって辛いはずなのに、私なんかを励ましてくれる弥生ちゃんの気持ちは嬉しくて、にこりと笑いかけた。


「慰めてくれてありがとね」

「慰めじゃなくて本当に思ってるんですけど」


口を尖らせる姿に笑っていると、彼女は何かがふっ切れたように声色を明るくする。


「まぁだから、あたしはとっくに諦めてるんです。ただ、彼以上に好きな人ができないだけで。あたしも、自然と新しい恋ができるのを待ちます」


清々しい表情になる弥生ちゃんを見て、少しほっとした。私のせいで今も苦しんでいるのではないかと、とても気がかりだったから。

私も気分を上げるため、あっけらかんと言う。


「よし、今度飲み直そっか! 一昨日は全然飲めなかったし」

「あ、賛成~! ビアガーデン、リベンジします?」

「また焼肉かー、胃薬飲まなきゃ」


いつもの調子に戻って……いや、以前より打ち解けて笑い合う私たちは、それからはたわいもない会話を楽しんだ。

仲直りできて本当によかった。けれど、私がやるべきことはもうひとつある。

優しい上司の姿を思い浮かべ、今度話す時間を取ってもらおうと考えつつ、売り場に戻った。


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