彼の瞳に独占されています
彼がかけがえのない存在なのだと再確認した私は、「はい」としっかり返事をする。

頷いた永瀬さんは、「これからも仕事仲間としてよろしく」と、上司としての微笑みを見せていた。



こんなに魅力的な男性を振るなんて、ここ数年の私には考えられないこと。だけど、後悔はしていない。

たとえ淳一との恋がうまくいかなくても、自分に正直でいれば心がラクになるということを覚えたから。


「とりあえずビールでも飲むか~」


アパートに帰宅し、部屋着のゆるいTシャツとショートパンツに着替えた私は、おじさんみたいな独り言をこぼす。冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出すと、その場でプルタブを開けた。

そして、ビールを飲みながら適当に夕飯を作る。こんな姿を見せられるのも、たぶん淳一だけだろう。

……や、でも恋をしていると、やっぱりだらしない姿は見られたくないし、家庭的なところもアピールしたいわけで……。

もしヤツが家に来る機会があったら、もっとちゃんとしよう。


おっさん化している自分を少々反省しながら、山浦さんからもらった茄子で麻婆茄子を作っていたとき、ピンポーンとインターホンが鳴った。

時刻はもうすぐ午後八時になるところ。そういえば夜間指定で頼んでおいた宅急便があったっけ、と軽く考えて玄関へと向かう。

──もうひとり、この時間でも平気でやってくる人物がいるというのに。




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