ミラージュ

良平とあたしが仲良くなるのに、そう時間はかからなかった。

春休みが終わり新学期が始まり、美形転入生の騒ぎも落ち着いてきた頃には、あたしは『浅井君』から『浅井』と呼ぶようになり、良平も同じように『赤澤』と呼ぶようになった。

やがて梅雨があけて夏休みが始まる頃には、『浅井』が『良平』にかわり、『赤澤』が『ナツ』に変わっていた。とても自然に。良平と一番仲のいい女子はあたしだと、自分でも自負していた。

その頃からだったかな。良平の視線が、いつも同じ人に向く様になったのは。

視線の先は、紗耶香ちゃんだった。学年で1位2位を争う美少女。サッカー部のマドンナ。
あの頃ふわふわの髪は、まだ肩辺りまでしかなかったと思う。走る度に、それがふわりと風に舞った。

良平の瞳のなかには、いつもそのふわりがあった。

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