ミラージュ

ショックな気持ちと同じくらい、当たり前かと思う気持ちもあった。紗耶香ちゃんとあたし。同じ土俵にすら立てないだろう。
良平が好きになってもちっとも不思議じゃないくらい、紗耶香ちゃんは魅力的な女の子だった。

良平は紗耶香ちゃんを『周田さん』と呼んだ。そして滅多に、話している所は見なかった。

人見知りの良平。ましてや好きな人となんか、そう簡単に話せないのだろう。

『ナツ』と呼ぶ良平の声が好きだった。他の誰が呼ぶ名前より、特別なものに感じていた。
でもあたしは、他人行儀の『周田さん』が羨ましかった。意識している証拠。
それを認識した日から、良平の呼ぶ『ナツ』が少しだけ切ないものに変わった。

呼ばれる度に、胸が少し、痛んだ。













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