ミラージュ
「ね、暑いよね」
「うん、暑いね」
「アイス食べたくない?」
「…お前、奢れっちゅーんじゃろ」
いぶかしげな良平に向かって、満面の笑みを返した。
「いーやーじゃ!!」
「前は奢ってくれたじゃーん。くじあめ」
「ありゃ20円じゃろーが!アイスは100円!桁が違うわ」
「あ、じゃあさ。じゃんけんして負けた方が、最後の日にアイス奢るっちゅーのは?」
「お前…ほんとは俺が勉強教えてやったお礼に奢られる立場じゃろーが」
そんないつものやりとりをしていると、不意に廊下側の窓が開いた。丁度あたし達が座っている真横。思わず二人とも目を向ける。
「あ、やっぱり!ナッちゃんじゃと思ったぁ」
太陽の様な笑顔。ふんわりとした髪の毛。
そこには、体操服姿の紗耶香ちゃんがいた。
文字通り固まるあたしと良平。多分、良平は思考も一緒に。
「紗耶香ちゃん…どうしたん?」
「あ、部活部活。サッカー部試合近いじゃろ?テスト週間なんかあってない様なもんじゃけ」
「でも最後の試合じゃけ、文句なんか言いよる暇ないんよね」と、笑顔で言う紗耶香ちゃん。目の前で良平が、ようやく思考を動かし出したようだ。
目が泳いでる。