ミラージュ

「明日からテストかぁ」

んっと伸びをしながら、良平が言った。

「テストが終わったら夏休み。でも受験生に夏はない。秋が来て、冬が来たらもう受験。なんだかなぁ…憂鬱やわ」
「良平はいいじゃん。合格圏内じゃろ?あたしなんかどうしろっち感じじゃけね」
「せっかく"ナツ"の"夏"なのになー。地獄の夏休みの幕開けじゃろ」

ししっと笑いながら、教科書を捲る良平。むぅっと睨みながら、あぁ、こうやって喋るのももう最後かもなと思う。

秋からは本当に受験メインの生活になるし、ましてやあたしと良平、選択授業も何もかも違う。
今みたいにふざけあって笑い合うことも少なくなるだろう。

わかってるのに、現状は変えれなくて。

だってもしあたしが想いを口にしても、良平の気持ちは変わらないし。

「…暑」

気持ちを誤魔化すために、小さく呟いた。
窓の外を見る。廊下の向こうに緑に包まれた中庭が見えた。

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