ミラージュ
「ナツ、うちらもう打ち上げ会場行くよ?」
すっかり準備のできた美帆達があたしを呼ぶ。
「あ、うん!後から追いかける!」
まだ準備の出来てないあたしはそう叫んだ。美帆達は「はよおいでや~!」と叫び返し、陸上部の打ち上げ会場へと向かう。
そんなみんなの背中を見送りながらあたしは、少しの感傷と共に急いで帰る支度を始めた。
その時だった。
「ナツ」
…懐かしい声。
あたしが大好きだった、あたしを呼ぶ声が聞こえた。
思わず振り向く。
「…良平」
部室前には、良平がいた。
みんなと同じように筒を掲げ、胸には同じ、白い花を称えて。
久しぶりだった。
良平に、名前を呼ばれるのは。
「ど…どしたん?」
「ん?部室覗いたら、まだナツが残っちょったけぇ」
何ら変わらない笑顔で、良平は部室に入ってきた。