毛づくろう猫の道しるべ
「怒るなよ、褒め言葉だぞ。だけど、俺に食いかかってくるところは変わってないや。安心した」

「何よ、さっさと去って行ったかと思ったら、突然現われたりして」

「言っただろ俺は自由だって」

「それで、ちゃんと英語、物にしたの?」

「ああ、なんとかな」

「楽しかった?」

「もちろん。遠山は?」

「私だっていい一年だったわ」

「そっか、よかった」

「これからどうするの?」

「とりあえず、先生に挨拶してくる。そして今後の進路について相談してくる」

「また一年生のクラスに戻るの?」

「いや、それをすると俺は二年の遅れになる。だから二年生のクラスに入れてもらう。そのための遅れを取り戻すため、この夏は必死で勉強するよ」

「また勉強なんだね」

「仕方ないさ、自分が選んだことだからね」

「また同じクラスになれるといんだけど……」

「そうなるように先生に一応リクエストしてみるよ」

 そんな事がまかり通るんだろうか。

 でもさらっと言ってくれたことが嬉しい。
 

 近江君は気ままに校舎に向って歩き出したので、私は引き止めた。

「近江君」

「なんだよ」

「ずっとヘルメット借りたままなんだけど」

「ああ、あれか。いつでもいいよ」

「いつか取りに来て」

「おいおい、俺が取りにいくのかよ」

「だって、学校にもってこれないでしょ」

「それじゃ、今日、用事が終わったら取りに行くよ」

 近江君はそういい残して行ってしまった。

 なんだかあっけない再会だった。

 もっと感動でお互い感激してもいいものなのに。


 例えば抱きしめてくれるとか…… 
 アメリカではハグは友達同士でもすることぐらい私でも知ってるのに。


 そこまでアメリカナイズされてないのだろうか。

 近江君の後姿に、しかめっ面を突きつけ、物足りない気持ちを陰でぶつけといた。

 近江君とすれ違った女子高生達が、近江君を振り返ってコソコソ話してる姿が、その時目に入った。

「今の人、何年生だろ。かっこよかったね」

 女の子達がキャッキャしているのを見ると落ち込んでしまう。

 やっと帰って来た近江君なのに、とっても遠いところにいるように思えてならなかった。

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