毛づくろう猫の道しるべ
 周りはテストが終わって軽やかな足取りで友達と帰っている。

 恋人とこの暑い中、更にいちゃいちゃして熱くなってるカップルもいた。

 校門でかっこつけて彼女を待っているような男子生徒もいる。

 その彼女らしき子が走って後ろから私を抜いていった。

 皆さん青春を謳歌していい事だと思っていると、走っていった女の子はその先を歩いていたグループに合流しただけだった。


 私がその待ってる男の前を通って校門を出ようとしたら、男が不機嫌に話し出した。

「おいおい、無視かよ」


 「えっ」と思って振り返れば、なんだか見たことあるような、ニカっとした笑顔を私に向けた。

 知っているのに、すぐに認識できない不思議な感覚で、徐々に記憶とその顔が一致すると、私の胸がドクンと大きく波打った。


「近江君! 嘘っ」

「やっと思い出したのか。ひでぇな、俺の事忘れてたなんて」

「だ、だって、その髪」

 あのダサかった短い髪のイメージしかなかったから、髪が伸びてイケメンになっている姿など想像してなかった。

 そこに自信が溢れているから、とても落ち着いて大人っぽく見え、私が知っている近江君と違っている。

「髪ぐらい伸びるだろ。ずっとあのままだと思ってたのか」

「だって、あれしか見てないんだもん」

「遠山の髪だって、伸びてるじゃないか、しかも体も丸みを帯びて、出てるとこ出てきたじゃないか」

「やだ、どこ見てるのよ」

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