さよならはまたあとで
君との距離
夏休みはあっという間に終わった。
去年に比べたら、5倍くらい充実していた夏休みだった。
明良と出かけたり、渚と七瀬と遊んだり。
ただ、気がかりなのは律太のことだった。
あの時は、気持ちが複雑で、突然逃げ出してしまった。そしてそれ以来、一度も連絡を取っていない。
話したい。
『ごめんね』
そうメッセージを送ろうとした回数は、一度や二度じゃない。
何度もその言葉をメッセージボックスに打ち込むけれど、いつも結局送れない。
送信ボタンを押そうとするたび、あの日の光景が鮮明に蘇るのだ。
そして、いろいろ考えてしまって、結果、メッセージを削除する。
この繰り返し。
意気地なしな自分に半分嫌気がさすものの、律太の本当の幸せを考えると、私は律太と律太の好きな人を少し離れたところで見守ることしかできなかった。