それを愛だというのなら


「ひどいよな。綺麗な思い出だけ残して、本当に眠るみたいに急に死んだんだ。残される俺の気持ちなんて、これっぽっちも知らないでさ」

「そんな……」


残される者の気持ちが、死にゆく者にはわからない?

そうかもしれない。だけど。


「今頃天国で楽しくやってんのかな」

「もういい」

「ん?」

「無理に笑わないでいいよ……」


綺麗な思い出を語るには悲しすぎる、健斗の笑顔。

どうかそんなふうに、悲しい瞳で笑わないで。

あなたが夜空に吸い込まれていってしまうような気がするから。


「私は、元カノさんがそう安らかに亡くなったとは思えない」

「瑞穂……」

「きっと、悲しかったはず。悔しかったはず。もっともっと、健斗と居たかったはずだよ」

「うん」

「誰も平気で、大好きな人を一人きりで置いていくわけないじゃない……!」


ぼろぼろと、涙が零れる。

それと同時に、自分が犯した罪の重さに押しつぶされそうになっていた。

どうして私、よりによって健斗を選んでしまったんだろう。


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