きらきらふわり
私はダメ押しとばかりに立ち去る前に彼の方を向き、微笑んで会釈をした。

彼は少し顔を赤くしてペコッとお辞儀をして分厚い本をたたんだ。

食いついたと思う。

あとはゆっくりと図書館前を歩けばいい。後ろから慌てて付いて来て、声を掛けてくれるに違いない。

私は内心ほくそえみながら、図書館出口のゲートをゆっくり通り過ぎた。

龍馬への罪悪感なんかこれっぽっちもない。

外へ繋がる重い扉を開けると、熱風とセミの鳴き声がドワッと一気に押し寄せてきた。

空調の効いた温度に慣れていた体から、慌てて吹き出す汗を感じ、右手を額に当て、眩しい太陽をほんの少しでもと遮る。

出てすぐ前に広がる幅広の階段を一段下りた時、よく通る声がした。


「あの!」


きた!

私は声のした方をゆっくり振り返った。満面の笑みで。


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