さよなら、もう一人のわたし
 数日後、わたしは母親と一緒に事務所に呼ばれた。
 千春や尚志さんも既に到着していた。

 この前事務所に来たときよりも物がすっきりしていて、エレベーターもきちんと使えるようになっていた。
 千春はわたしの母親を見て、なぜかはしゃいでいるように見えた。
 尚志さんは対照的に神妙な顔を浮かべていた。
 成宮秀樹はなんともいえない顔を浮かべていた。淡々としているようにも見えるし、困惑しているようにも見える。

 書類に目を通し、母親が細かい事項を確認していく。それに成宮秀樹や尚志さんが淡々と答えていた。
 契約をすませると、母親は「話すことはもうない」とさっさと帰っていってしまった。
 わたしと千春、尚志さん、そして成宮秀樹が残された。

「京香のお母さん綺麗だよね。京香はお母さん似だよね」

 千春はうっとりとした表情を浮かべ、そんなことを言っていた。

「そうかな」
「そうだよ。ね、伯父さん?」

 成宮秀樹は何も言わなかった。

「俺たちは外にいるよ」

 尚志さんはそう言うと、千春の手をつかむ。

「何でお兄ちゃんが怒っているのよ」

 千春は不満そうに言った。

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