さよなら、もう一人のわたし

 わたしは歩き出した彼の後を追った。
 淡々と歩く彼の足取りが大通りに来た時に止まる。

「君はそんなに女優になりたい?」
「なりたかったです」

 過去形にしたのはもう終わった夢だと信じて疑わなかったからだ。
 尚志さんは何かを考え込んでいた。

「君の夢、かなうといいね」

 そう言うと、彼はわたしの肩をぽんと叩いた。


 わたしは夏休み、尚志さんと一緒に何度か遊びに行った。
 千春の家だったり、買い物だったり、食事をしたり。どれも他愛ないことだが、今まで生きてきた中で最高の夏休みになったのだ。
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