さよなら、もう一人のわたし

「それは大丈夫だけど。本当なの?」
「大丈夫って。詐欺とかじゃないから安心して」
「そうじゃなくて伯父さんは選ばないと思っていたよ。浮かない表情を浮かべていたし」
「でも、京香を選んだ。だから大丈夫よ」

 彼女の言葉を聞いていると、もしかすると千春が説得してくれたのかもしれない。
 彼にとって千春はそれほどの存在なのだ。
 そのとき、玄関が開く音が聞こえてきた。

「お母さんが帰ってきたみたい。話をしてみるよ」
「頑張ってね」

 わたしは電話を切った。部屋から出ると、洗面所から水の流れる音が聞こえてきた。

 洗面所に行くと、母親の後姿に語りかける。

「わたし、映画に出ないかっていう話があるの」

 母親は振り返ると、疑わしそうにわたしを見る。

「騙されているんじゃないの?」
「そんなことないよ。友達の知り合いが映画監督をやっていてね、その人の映画にって」

 お母さんの返答はもっともだ。わたしが逆の立場なら、子供の可能性を信じていたとしてもそう言うだろう。千春や尚志さんがわたしを騙すわけがない。
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