大切な人へ


「もっと早く様子を見にいってれば…」

車に乗ったけど動かさず
ハンドルをぎゅっと握った彼が小声で言った

ごめんって聞こえた声がひどく弱々しくて
泣いているようにさえ聞こえた



『うぅん…助けてくれてありがと…』

ちゃんと笑えたかな

今できる精一杯のことだった



そこから無言の車内
オーディオがついてないのは初めてだった…


「もう少し…頑張れる?」

『何ですか?』

「今日の2人の処分を決める。親もきてる」

『……本人は?』

「会わせないから安心していい」

黙って頷く私の手を
横から優しく握ってくれた



2人の両親が泣いて私に頭を下げる…
でもいいです なんて言えず黙っていた

制服は弁償 治療費とバイトを休む間の
生活費と慰謝料を後日もらう事になり示談

2人の生徒はそれまでの素行の悪さもあり
退学処分になったそうだ…


帰りも先生が送ってくれた…

もう10時を過ぎていた


そばに居ようか?って言ってくれたけど断った

明日はゆっくり休んでと言って彼は帰っていった



バタン…

ゆっくりその場所に座る…

切り傷もお腹も…心も…痛い…


下着を着けていないのが気持ち悪い…




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