大切な人へ
約束

HRが終わってすぐ指定された科学へ向かう


__あれ?鍵かかってる


早くここに来たくて急ぎすぎたらしく
先生より先に着いてしまったようだ


彼を待ちながら窓を開けてみると
そこは正門が真正面に見える位置

5月の風はまだ涼しくて気持ちいい
吹き込む風が髪をさらっとなびかせていた






「おまたせ!」


彼の声がすぐ近くで聞こえて一瞬体が跳ねた

先生はそう言って鍵を開けていて
その間に私は窓を閉めた



「髪 長いね。ずっと伸ばしてるの?」

『そうですね 中学には伸ばし始めてました』

腰の近くまであるこの長い髪は 私の宝物
手入れもいつも頑張ってます


開けてくれた教室の中へ入り
黒板の近くの机に向かい合わせで座る


わ…近い…


手を伸ばせば届いてしまうその距離に
もう心臓が騒がしくなっていく

でももっと話したい!



『ここ、普段鍵かかってるんですね?』

「うん。薬品もあるし使う時だけ開けるんだ」

『そっか あんまり来ないから知りませんでした』

「うち進学校だし実験少ないもんね。
だからこの部屋も俺ばっかり出入りしてる」


やっぱり話しやすい
どうしても 普段の淡々とした授業とのギャップを感じてしまう



普通に話してくれる先生に
謝っておきたいことがあるの

『あの…体育祭の日は
バタバタ帰ってしまって、すみませんでした』

「全然?気にしてたの?」

『はい…無愛想だったなって』


そう言うと彼はクスッと笑った。
それを見逃さない私!


「いや。それを言うなら
普段の俺の方が無愛想でしょ?」

『え…そんな事っ…
でもクールですよね 今は親しみやすい感じ』


彼は少し眉をひそめて笑い
ありがとうと言って 教科書を開いた。


先生もそう思ってるんだ?

教壇の上の時と今の雰囲気
全然違うもんね


問題を教えてくれる表情もしぐさも
丁寧で優しくて

先生のこんなところ、みんなは知らないよね



彼の色んな表情を近くで見ていた私は
多分顔が赤かったと思う…




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