ラブ パラドックス
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「夏目先生のおかげで、無料相談会が大変なことになりそうだわー」
「おい。不満なのかよ。嫌味っぽい言い方じゃねえか」
「嫌味だなんてそんなそんな。顧客の大量獲得も夢じゃない。商売繁盛、いいことじゃないですか」
「本当に思ってんのかよ」
「思ってるよ。臨時ボーナスでも出ないかなあ」
「金かよ」
違うよ。だって夏目くん。夏目先生のセミナーが大反響で、無料相談会の申し込みメールが殺到したでしょ?
電話の問い合わせも、今までこんなに電話が鳴ったことないってくらい、鳴りっぱなしだったでしょ?
明日の金曜日中に、メールを確認して、電話申し込みとも折り合いつけて…
明日の激務が容易に想像できる。凄いよ。凄いことなんだけど、同期としてはやっぱり悔しいでしょ。
悔しいんだけど、誇らしいの。
ぎゅうぎゅう詰めの電車に乗って、身体が密着している。揺れるたび、かばうように支えてくれる。
少し顔を上げると、触れあってしまいそうな唇が目の前で。
耐えきれず俯いた。