ラブ パラドックス
「大丈夫か?」
遠慮気味に顔をのぞき込んできた夏目くんに、腕をつかまれた。
立っているのを支えてくれているような、そんな手の力で。
「外出先で母が倒れて、救急車で病院に運ばれたって」
「容体は?」
「わからない。一緒にいた母の友人からの電話だったんだけど、おばさんも動転しててよくわからなかった。ごめんわたし、病院行かなきゃ」
「病院どこ?お前の地元?」
「うん」
夏目くんが腕時計に目線を落とす。
「この時間なら車で高速飛ばしたほうが早いだろ。車で送る」
「大丈夫。迷惑かけられないし電車で行く」
「迷惑じゃねえよ。こんな時にそんなくだらないこと言うな。俺んち戻るぞ」
言うなり、夏目くんは再び私の手を引き、今出たばかりの駅に向かい歩き始めた。