ラブ パラドックス
「夏目くん…」


諦めと期待が混在して、ごちゃごちゃしていたところに投げ込まれた言葉。

あいにく彼の顔は、声と体勢から推測するに、私の頭の上で表情が見えない。



恐る恐る、両手で彼の胸を押して離れた。

直立する夏目くんの、きれいにカットされた髪の毛からのぞいた耳が、薄っすら赤く色づいていた。


無意識に立ち上がり、彼の顔を上目で覗く。


「あの夜、泣きそうな顔したお前見てたら一人にしておけないって思った。お前のそばにいてやりたいって気持ちと、俺がお前といたいって気持ちも強かった」

「・・・・・」

「タクシーで指が触れたとき、もう我慢の限界だった」



ドクン、ドクンと打ち付ける鼓動が、指先まで伝わる。

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