ラブ パラドックス

「俺、お前のこともっと知りたいって思ってる」

ギュと心臓が締め付けられる。ドクン、ドクンと打ちつけるそこに、一気に熱いものがこみ上げてくる。


「悪い、泣くなよ」

夏目くんが慌てた様子でカウンター上に目をやる。

ティッシュをボックスケースから二枚抜き取って、押し付けるように手渡された。


「え?わたし泣いてる?」


渡されたティッシュを下瞼に押し当てた。

わ、こりゃ結構涙出てる。


「ごめん、」申し訳なさそうに目を伏せる夏目くん。


涙を拭いてくれるような親密さや、抱きよせてくれる関係性も。


私たちの間には、当然存在しない。
< 83 / 294 >

この作品をシェア

pagetop