虚無たちの葬失
和真は立ちすくみ、誠の指先を見つめる。
不気味な雰囲気の中、長いだんまりが続き、五人は次第に息苦しさを覚え始めていた。
彼女の死の真実はあまりにもあっけなく、彼らの心を占めているのは、今までに味わったことのない虚無感だった。
ぽっかりと心に穴が開き、中を満たしていた黒い液体が滴る音が全身に響く。
誰一人その場から離れようともせず、時間だけが刻々と変化していた。
やがて、虚しさに打ちのめされた純也がゆらりと教室の扉に向かって足を運ぶ。
どこに行くんだ、と尋ねた誠の声は乾いていた。
純也は顔を見せず、教室に背を向けて扉に手をかけ、静止する。
四人は固唾を飲んでそれを見守り、時計は無機質な音を教室に響かせた。
「……全部、意味がないと言ってきたし、実際、全ての物事に意味があると感じたことなんか無かったから、俺は自分がニヒリストなんだと思い込んでいた」
純也の喉から発されたのは、濡れた声だった。
窓辺に映る穏やかな赤い空は、扉の前に立つ少年の心情を色濃く表している。
「……遥が言っていたように、俺は自分で物事の意味を見つけようとしてきた。一番俺が意味を見出したかったのは、実感を抱いたことがない自分の心や命のこと。
だから俺は……凪紗が好きだという気持ちを、無意味なものにしたくはなかった」
扉の端を握る手の甲に血管が浮かんだ。初めて明かされた彼の本音に、四人は返す言葉もなく静かに耳を傾ける。
純也はしばらく黙りこくり、ぼんやりと薄暗い廊下の壁を眺めていた。
「……でも、あの日、あの部屋に行ったら、凪紗が血の海の中で死んでいた。始めに感じたのは、俺の心を潰されたような鈍い痛みだった。ああこれが、心が持つ価値なのかと俺は初めて実感したんだ。そして、憎しみの感情を初めて知った」
だから、俺は今日、犯人を特定してやろうと思って凪紗の話題を持ち出した。
そう言ったあと、純也の肩は二度、力なく上下に揺れた。
その後ろ姿は、笑っているようだった。
純也の目に映る世界の輪郭が、水をこぼしたようにぼやけ出す。
「……でも、結論は自殺。はは、やっぱり俺の憎しみに意味なんてなかった。それに気づいた瞬間……虚しく、なった」
つと、小さな嗚咽が漏れた。