火恋 ~ひれん~
食べ終えるまで彼と会話らしい会話もせず、当然と言えば当然だ。友達になろうという訳でも無いのだし、共通するものは由里子さんだけ。かと言って二人の関係を詮索も出来ない。何も訊けない。
お店だったら。少し強面のお客さんだろうと普通に、「今日は冷えますね」とか「一年があっという間に終わっちゃいますね」とか話しかけられるのに。
頭の中で一生懸命さがしてみても、彼に掛けられる言葉は一つも見つけられない。それが・・・ひどく胸でつかえて苦しかった。
せめて。助けてもらったお礼に楽しい会話ぐらい・・・・・・。
時折りアイザワさんと店主さんは、誰々は元気か、と他愛のない遣り取りを交わす。
結局わたしは「とても懐かしい味がします」と感動を伝えたのみだった。
帰り際、お礼に代金を支払うと申し出たわたしに、
「・・・俺は女に奢られる趣味は無いんでな」
煙草を咥え、上から一瞥をくれる。
馴染みの店主さんの前でプライドもあるだろう。素直にその場は彼に任せ、車に戻りかけたところで、忘れ物をしたとわたしだけ引き返す。
「・・・あの・・・っ、次にアイザワさんが食べに来たらこれで・・・!」
そう言って財布から取り出した二千円をカウンターに置き、急いで戻ろうとした。すると。
「・・・嬢ちゃん」
静かだけれど力強い声で引き留められ、振り返ると店主さんが腕を組みこちらを真っ直ぐ見据えていた。
「いつでも食べに来な。・・・待ってるよ」
お客へのただの愛想・・・? 何か別の深い意味で云われたような。けれどその時に分かる由も無かった。
「はい・・・! ぜひまた」
早口でお礼を言い、頭を一つ下げて小走りに駆け出す。アイザワさんが立っているシルエットがその先に見えている。
お店だったら。少し強面のお客さんだろうと普通に、「今日は冷えますね」とか「一年があっという間に終わっちゃいますね」とか話しかけられるのに。
頭の中で一生懸命さがしてみても、彼に掛けられる言葉は一つも見つけられない。それが・・・ひどく胸でつかえて苦しかった。
せめて。助けてもらったお礼に楽しい会話ぐらい・・・・・・。
時折りアイザワさんと店主さんは、誰々は元気か、と他愛のない遣り取りを交わす。
結局わたしは「とても懐かしい味がします」と感動を伝えたのみだった。
帰り際、お礼に代金を支払うと申し出たわたしに、
「・・・俺は女に奢られる趣味は無いんでな」
煙草を咥え、上から一瞥をくれる。
馴染みの店主さんの前でプライドもあるだろう。素直にその場は彼に任せ、車に戻りかけたところで、忘れ物をしたとわたしだけ引き返す。
「・・・あの・・・っ、次にアイザワさんが食べに来たらこれで・・・!」
そう言って財布から取り出した二千円をカウンターに置き、急いで戻ろうとした。すると。
「・・・嬢ちゃん」
静かだけれど力強い声で引き留められ、振り返ると店主さんが腕を組みこちらを真っ直ぐ見据えていた。
「いつでも食べに来な。・・・待ってるよ」
お客へのただの愛想・・・? 何か別の深い意味で云われたような。けれどその時に分かる由も無かった。
「はい・・・! ぜひまた」
早口でお礼を言い、頭を一つ下げて小走りに駆け出す。アイザワさんが立っているシルエットがその先に見えている。