火恋 ~ひれん~
 翌日。アイザワさんから聴いたのだろう、血相を変えた由里子さんが午後一番でお店に駆け込んで来た。

「織江ちゃん、良かったぁっ、無事で良かったあっっ」

 わたしを見るなり力いっぱい抱きついて。傍らで果歩ちゃんと野乃ちゃんが唖然としている。ちょうどお客さんも途切れていて幸い、というべきか。

「すみません、由里子さん・・・! 心配かけてしまって」

「いいの、そんなのは! とにかく何も無くて良かったんだからぁっ」

 目を赤くして、すん、と鼻をすする彼女を、自分の方が歳下なのに可愛いと思ってしまう。

「さっき相澤君から連絡来て、もう心臓止まるかと思ったのぉ」

 はあぁと大きく吐息を漏らし、やっと落ち着いたのか、真顔でわたしに尋ねる。

「ほんとに大丈夫? 今日ぐらい休んでもいいのよ?」

「大丈夫です、由里子さん。怪我をした訳じゃないですし、昨日はそのちょっと怖かっただけで・・・」

 小さく笑顔を見せると、ならいいけど、とそれでもまだ心配そうにわたしを気遣ってくれていた。

「織江さん、もしかして昨日何かあったんですか?!」

 わたし達のやり取りを聴いていた果歩ちゃんも詰め寄ってきて、アイザワさんの事は適当に濁しながら昨夜の出来事を皆んなに説明したのだった。 
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