火恋 ~ひれん~
「うわぁっ、マジ無理っ、なにそのオヤジ~ッッ!!」
キモイ、キモイを連呼して憤慨する果歩ちゃん。
「・・・織江さん、お客さんにも優しいから・・・」
ポツリと野乃ちゃんが呟く。
「でも悪いのは絶対そいつです。死ね、です」
普段はあまり感情的にならない彼女も珍しく、冷淡に言い捨てた。
「お客様商売だからね、丁寧な対応を心掛けるのは大事よ。それはこれからも変わらないで欲しいの。たとえばそうねぇ・・・、もし接客を褒められたら“スタッフなので当然の事をしてます”って、敢えて付け加えてみて? 要は特別じゃないって思わせればいいの。ねっ?」
きっと内心は不安でいっぱいな筈の他の二人の為にも、由里子さんはオーナーらしくアドバイスをし、「さっ、今日も笑顔で頑張ろう!」と最後は明るくはっぱをかけた。
「あ、織江ちゃんちょっと」
わたしをバックヤードに誘った由里子さんは、休憩スペースで向かい合って腰掛けると、少し困ったような申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ごめんね、織江ちゃん。相澤君のこと」
一瞬。キスされた事を思い出して狼狽える。アイザワさんの事って・・・え、まさかそれ・・・っ?
「あ、あの、アイザワさん、が何か・・・?」
「驚いちゃったでしょ? やくざクンだから」
そっち? 思わずほっとする。
「えぇと、はいまあ。・・・でも由里子さんの知り合いって分かって逆に安心でした」
「彼ねぇ同級生なの、中学高校って。よく一緒に遊んでて、だから今でも時々ね、相談乗ってもらったり助けてもらってるんだぁ」
屈託なく笑う由里子さん。
同級生・・・だったんだ。何故か胸の中がふんわり和らぐ。だからユリって。もっと親密な男女の関係なのかって・・・思ったりもしたから。
「果歩ちゃん達に、通りすがりの人に助けてもらったって嘘ついてくれて有りがとう。・・・相澤君のことは織江ちゃんの胸に仕舞っておいてね」
真っ直ぐな彼女の眼差しには一片の揺らぎも無かった。
彼を恥じているのではなく。けれど彼らが反社会的勢力と呼ばれる現実がある以上、決して明かせない秘密。セルドォルというこの小さな城を守る為に。だからわたしも。
「・・・大丈夫です。墓場までちゃんと持って行きます」
しっかり頷いてそう答えると、由里子さんは、「やっぱり織江ちゃん、大好き!」と破顔一笑したのだった。
キモイ、キモイを連呼して憤慨する果歩ちゃん。
「・・・織江さん、お客さんにも優しいから・・・」
ポツリと野乃ちゃんが呟く。
「でも悪いのは絶対そいつです。死ね、です」
普段はあまり感情的にならない彼女も珍しく、冷淡に言い捨てた。
「お客様商売だからね、丁寧な対応を心掛けるのは大事よ。それはこれからも変わらないで欲しいの。たとえばそうねぇ・・・、もし接客を褒められたら“スタッフなので当然の事をしてます”って、敢えて付け加えてみて? 要は特別じゃないって思わせればいいの。ねっ?」
きっと内心は不安でいっぱいな筈の他の二人の為にも、由里子さんはオーナーらしくアドバイスをし、「さっ、今日も笑顔で頑張ろう!」と最後は明るくはっぱをかけた。
「あ、織江ちゃんちょっと」
わたしをバックヤードに誘った由里子さんは、休憩スペースで向かい合って腰掛けると、少し困ったような申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ごめんね、織江ちゃん。相澤君のこと」
一瞬。キスされた事を思い出して狼狽える。アイザワさんの事って・・・え、まさかそれ・・・っ?
「あ、あの、アイザワさん、が何か・・・?」
「驚いちゃったでしょ? やくざクンだから」
そっち? 思わずほっとする。
「えぇと、はいまあ。・・・でも由里子さんの知り合いって分かって逆に安心でした」
「彼ねぇ同級生なの、中学高校って。よく一緒に遊んでて、だから今でも時々ね、相談乗ってもらったり助けてもらってるんだぁ」
屈託なく笑う由里子さん。
同級生・・・だったんだ。何故か胸の中がふんわり和らぐ。だからユリって。もっと親密な男女の関係なのかって・・・思ったりもしたから。
「果歩ちゃん達に、通りすがりの人に助けてもらったって嘘ついてくれて有りがとう。・・・相澤君のことは織江ちゃんの胸に仕舞っておいてね」
真っ直ぐな彼女の眼差しには一片の揺らぎも無かった。
彼を恥じているのではなく。けれど彼らが反社会的勢力と呼ばれる現実がある以上、決して明かせない秘密。セルドォルというこの小さな城を守る為に。だからわたしも。
「・・・大丈夫です。墓場までちゃんと持って行きます」
しっかり頷いてそう答えると、由里子さんは、「やっぱり織江ちゃん、大好き!」と破顔一笑したのだった。