火恋 ~ひれん~
「・・・愛してます」
 
 気が付いた時には、そう口にしていた。
 死ぬまで、誰かに向けることは無いだろうと思っていたその言葉を。

 胸の中で、なぞる。
 アイシテイマス。

 この言葉に尽きてしまうのだろう。凡てはきっと。
 けれど。わたしは知らずに生きて来た。愛されることも愛することも。
 だから今、貴方に伝える言葉として正しいのかどうかは分からない。
 決意表明のようなものだったかも知れない。

 これから何があっても。貴方を愛し抜く。と。

 渉さんが僅かに眸を歪めたように見えた。
 奥からわたしを、黙って見つめていた。
 何かを云いたげに、一瞬瞑目する。

「・・・・・・ああ。分かっている」

 低く、確かめて呟くように。口許に儚げな笑みを浮かべて。


 ようやく悟った。

 貴方から。同じ言葉が返ることは生涯無いのでしょう。

 静羽さんへ・・・妻へ、貴方は最後の贈り物をしたの、きっと。

 きっと彼女と一緒に葬ってあげたの。愛している、の言葉を。



 その瞬間、わたしの心の奥底で焔が煽られ、ひときわ大きくはためいた。
 それでも。
 いま貴方の為に生きられるのは、わたしだけ。
 彼女の分まで真っ直ぐに、自分を誇って愛するの。




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