青藍のかけら
「千尋!」
お決まりの戯れの会話に割り込んできた声に振り向くと、ここの店員さんであろう黒い制服を着た男の人。
茶色く染められた髪がきれいな顔に嫌みなく似合っている。
いまどきの男の人、って感じの美形。
…千尋の友達?
「圭祐(ケイスケ)」
「うわ、こちらが千尋の彼女?超美人じゃん」
「うん、そう」
「…千尋…」
あっさりと恋人宣言するのもいつものことだけど、口にしない限り恋人に見られてしまう程似てない双子なんだなぁって実感する。
「嘘うそ。姉の千鶴。千鶴、この人俺の大学の先輩で俺の友達の田代(タシロ)圭祐」
「初めまして。よろしくね、千鶴ちゃん。噂のお姉さんに会えて嬉しいよ」
にっこりと笑って差し出された手に反射的に握手を返す。
…噂って何?
顔に出ていたらしい私の疑問に彼は整った顔ににこにこと笑みを作ったまま答えてくれた。
「もちろん、モッテモテの榊千尋くんが彼女より愛してやまない超美人のお姉さん、ってことだよ。噂以上に美人だね。今彼氏いるの?」
人懐っこさの中に微妙に軽さが見えてきた気がする。
この人、絶対女ったらしだ。