リアルな恋は落ち着かない
日曜日のわりに、道路は意外と空いていた。

時々渋滞にかかるものの、少し待てば車はすぐに動き出す。

車内に流れるFMラジオ。

交わす会話が少なくて、ラジオ番組の内容ばかり、耳に入ってきてしまう。


(五十嵐くんもおしゃべりっていうタイプじゃないし、私も基本苦手だし・・・)


当然と言えば当然の状況。

何か話さなくちゃと常に思ってはいるものの、会話の糸口はなかなか見つけられなかった。

「・・・橘内さん」

ふいに話しかけられて、私はドキリと彼を見た。

眼鏡姿の横顔は、やっぱりなかなか見慣れない。

「魚が美味い店があるんで、昼はそこに行こうかと思ってるんですけど。刺身とか、苦手じゃないですか」

「うん。・・・大好き」

「そっか。じゃあ、ドライブがてらとりあえずそこに向かいますね」

ハンドルを、少し右に傾けた。

五十嵐くんはナビも見ず黙々と運転しているので、行き慣れた場所なのだろうと思った。

「あ・・・あの、江ノ島は、よく行くの?」

勇気を出して、自分から話しかけてみた。

五十嵐くんは一度私に目を向けて、「いえ」と言ってちょっと笑った。

「最近はあんまり。大学時代はしょっちゅう来てましたけど」
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