リアルな恋は落ち着かない
大学のとき、学園祭で弓道部の演武を見たことがある。

静かで、力強く弓を放つその姿は、男女関係なくとても美しいものだと思った。

「・・・そう、ですか」

私の言葉に、五十嵐くんはちょっと照れたようだった。

けれどすぐに、何かを思い出したように「ああ」と言って軽く笑った。

「袴フェチなんでしたっけ」

「えっ!?」


(フェチって・・・あっ!一昨日のこと・・・)


金曜日、飲み会で話していたこと。

ももさんは私のことを「袴を着た男子が好きだ」と決めつけのように言っていた。

五十嵐くんは、それをフェチ扱いで覚えているようだった。

「あ、あれは・・・違うの!ももさんが勝手に結び付けて言ってるだけで・・・。

袴が好きってわけじゃなくて、今はまってる乙女ゲームのキャラが、剣道をしてて袴をはいてるっていう、ただそれだけなの。だから、フェチとかじゃなくて」

フェチ扱いは、とっても困る。

だからそれは違うんだぞと、伝えたいがために必死に説明したけれど。

「・・・オトメゲームのキャラ・・・」

五十嵐くんがぶぶっと笑った。

私はここで、自らオタク発言をしてしまったことに今更ながらに気が付いた。


(し、しまった・・・!)
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