リアルな恋は落ち着かない
せめて少女マンガのキャラならば、なんとなく可愛い気があるし、普通の子っぽいような気がしないわけでもない。

けれど、よりによって乙女ゲームのキャラにはまっていると自ら宣言するなんて、一般男子からしたら、きっとドン引きものに違いない。


(やってしまった・・・)


オタクとばれた後だから、気が緩んでいたかもしれない。

乙女ゲームなんて、五十嵐くんは存在すらも知らないかも。

「あ・・・そ、その・・・乙女ゲームって、そんなヘンなゲームではなくて。・・・おもしろいの!

最近は、普通の女の子にもすごく人気で・・・。イベントも、大盛況で・・・」

もごもごと、更なる言い訳を必死で重ねていく私。

五十嵐くんは、こらえきれないようにずっと笑い続けている。


(う・・・)


「・・・そ、そんなに、笑わなくても・・・」

「いや・・・、すいません。おもしろくて」

赤面する私を横目に、眼鏡の五十嵐くんは、今まで見たことないくらい、顔を崩して笑っていた。


(おもしろいって・・・。やっぱり、からかわれてるんだ・・・)


恥ずかしくなって、私は誤魔化すようにうつむいて、そしてその後窓の外へと目を向けた。

流れていく街の風景。見ていると、少し気持ちが落ち着く。

けれどすぐに、信号待ちで車が停まって、動いていた景色も同時にそこで止まってしまった。

「・・・橘内さん」

声をかけられ、反射的に運転席を振り向いた。

見慣れない眼鏡の彼は、やはり見慣れない、優しい顔を私に向けた。

「おもしろいって、かわいいっていう意味ですよ」








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