リアルな恋は落ち着かない
「橘内さん、高いところは平気ですか」

両脇に土産物屋の連なる細い坂道を登りながら、五十嵐くんが私に問う。

私が「うん」と頷くと、島の頂上にある展望台に上らないかと提案された。

「周りは全部海だから。景色いいですよ」

「そうなんだ・・・。うん。行ってみたい」

展望台は、「シーキャンドル」というらしい。

海に囲まれた長くそびえる展望台は、空から見たらまさにそんなカタチなのだろうと、その情景を想像した。




私たちは、「エスカー」なる有料のエスカレーターに乗って、島の頂上に行きついた。

歩いても行けるそうだけど、坂や階段がキツイという話だったので、運動不足の私には、かなり助かる乗り物だった。

エスカーを降りてしばらく進むと、開放感のある植物園が現れる。

この植物園の中に、シーキャンドルもあるらしい。

入り口で五十嵐くんが入場券を買ってくれ、私はお礼を言って受け取った。

「ありがとう・・・」

「いえ。じゃあ、入りましょう」


(・・・優しい・・・)


お昼もごちそうしてもらい、こうして植物園の入場券も買ってくれた。

気遣う態度も優しくて、これはまさに恋愛絡みの「デート」じゃないかと改めてそう意識した。
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