リアルな恋は落ち着かない
(いいのかな・・・そう思って)


一緒にいるたび、気持ちが甘く傾いていく。

もしかしたら、こういうのを「恋のはじまり」というのかもしれないと、私は心の中で感じていた。




「わ、きれい」

入場門から中に入ると、すぐに色とりどりの花々が私たちを出迎えてくれた。

花壇に咲く花はもちろん、私の背よりも高いガーデンアーチを彩る花々が、綺麗でそしてかわいかった。

近寄って、花の色形を眺めていると、隣にいたはずの五十嵐くんがいないことに気が付いた。


(あれ?)


私はキョロキョロしながら後ろを振り向く。

見つけた彼は、少し後ろで立ち止まったまま、こちらを見て眩しそうに目を細めていた。

「あ・・・どうしたの?」

いつもよりも声を張って、離れた彼に聞こえるように質問をした。

すると五十嵐くんは少し笑って、甘さを帯びた顔で笑った。

「・・・いや、キレイだなって思って」

なぜか私は、ドキリと胸を鳴らしてしまった。

優しくて、甘い顔。

そんな表情を初めて向けられたせいだと思った。

心臓がうるさく鳴り出したので、私はそれを誤魔化すように、五十嵐くんに声をかけた。

「あ・・・香りもするよ。近くに来ると」

「ああ、そうですね」

彼は私に近づくと、ピタリと真横で立ち止まる。
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