リアルな恋は落ち着かない
そして私の頭上をかすめるように、ガーデンアーチの花に顔を近づけた。

「確かに。いい匂いがする」

「・・・うん」

いつもより、確実に距離が近かった。

花はもちろん、私の髪の香りにまで触れられた気がしてしまい、私はひとりでドキドキとした。


(このぐらいで。赤くなったりしちゃダメだ・・・)


五十嵐くんにとっては、何気ない行動のひとつなのかもしれなかった。

自分一人彼にドキドキすることは、なんだかとても恥ずかしかった。

「・・・じゃあ、行きましょうか」

「うん・・・」

うつむいて、硬直したままだった私に、五十嵐くんは促すように声をかけて歩き始めた。

胸がうるさく鳴り響いてしまうのは、私には、もうどうにもできないようだった。



植物園にある一通りの花を愛でると、当初の目的地だったシーキャンドルに辿り着く。

日曜日だけあって、展望台に上るエレベーターの列はカップルや家族連れなどさまざまな人で長く連なっていた。

「結構並んでますね」

「そうだね。人気なんだ・・・」

話しながら、列の最後尾に並ぶ。

結構待つと覚悟をしたけど、エレベーターの中は広く、一度にたくさん運べるようで、思っていたよりも早く乗る順番が回ってきた。

満員のエレベーターの中は、彼との距離が密着レベルで縮まったけれど、私はずっとうつむいて、移動時間をやり過ごした。





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